育児中の「睡眠負債」の正体

睡眠

「夜中に何度も起きるのが当たり前になって、朝からもう疲れている」

育児中の方なら、一度は感じたことがあるのではないでしょうか。この状態が続くと、単なる寝不足では片付けられない「睡眠負債」という状態に陥っていきます。

理学療法士として、そして1歳の息子を育てる父親として、私自身もこの睡眠負債と日々向き合っています。今日は、その正体と、育児中でも取り組める工夫についてお話しします。

■ 睡眠負債とは何か

日々の睡眠不足が少しずつ積み重なり、まるで借金のように体に蓄積していく状態を「睡眠負債」と呼ぶことがあります。1日程度の寝不足であれば、次の日にしっかり眠ることで解消されやすいのですが、慢性的に睡眠時間が足りない状態が続くと、休日にまとめて眠っても完全には解消されにくくなる、と考えられています。

厚生労働省の「e-ヘルスネット」によると、慢性的な睡眠不足は、眠気や意欲低下、記憶力減退といった精神機能の低下だけでなく、ホルモン分泌や自律神経機能にも大きな影響を及ぼすとされています。具体的には、睡眠不足が数日続くだけでも、食欲を抑えるホルモン(レプチン)の分泌が減少し、食欲を高めるホルモン(グレリン)の分泌が高まることで食欲が増大することや、インスリンの働きが現れにくくなること(インスリン抵抗性)、本来夜間に下がるはずの血圧が高止まりすることなどが報告されています。

これは単に「眠い」という感覚だけの問題ではなく、体のさまざまな機能に影響を及ぼしうる状態だということです。

■ 育児が睡眠負債を招きやすい理由

育児中は、複数の要因が重なって睡眠負債が蓄積しやすい環境にあります。

一つ目は、夜間の中途覚醒です。授乳やおむつ替え、夜泣きへの対応で、まとまった睡眠時間自体が細切れになります。睡眠は浅い眠りと深い眠りを繰り返すサイクルで構成されているため、途中で起こされることで、深い眠りに入りきれないまま朝を迎えることになりやすいです。

二つ目は、緊張状態の持続です。子どもの様子を常に気にかけている状態は、自律神経で言えば交感神経が優位な状態が続きやすいことを意味します。前回お伝えした通り、この状態が続くと、たとえ眠る時間が確保できたとしても、体が休息モードにうまく切り替わらないことがあります。

三つ目は、休息を取ることへの罪悪感です。「自分だけ休んでいいのだろうか」という気持ちが、実際に取れる休息の質を下げてしまっている場合もあります。

■ 完全な解消を目指さなくていい

大切な前提としてお伝えしたいのが、育児中に睡眠負債を完全にゼロにすることは、正直かなり難しいということです。目標を「ゼロにする」ではなく「これ以上増やさない」「少しでも減らす」に置き換えるだけで、気持ちが楽になる方も多いと思います。

■ 今日からできる工夫

睡眠負債を少しでも軽くするために、育児中でも取り入れやすい工夫をいくつか紹介します。

一つ目は、細切れでも「質」を意識することです。短い睡眠であっても、部屋を暗くする、スマートフォンを見ない、といった環境を整えるだけで、眠りの深さが変わりやすいとされています。

二つ目は、パートナーとの分担で「まとまった睡眠時間」を交代で確保することです。毎日同じ時間帯でなくても、週に数回、数時間だけでもまとまった睡眠を取れる仕組みを作れると、負債の蓄積速度を緩められる可能性があります。

三つ目は、日中の短い仮眠です。15〜20分程度の短い仮眠は、夜の睡眠を妨げにくく、日中の疲労感を軽減する助けになると言われています。

すべてを一気に変える必要はありません。今日は一つだけ、試せそうなものから始めてみてください。

※本内容は一般的な健康情報の提供を目的としており、特定の症状の診断や治療を代替するものではありません。症状が続く場合や強い痛みがある場合は、必ず医療機関を受診してください。

私はPT(理学療法士)であり医師ではありません。この記事は診断・治療を目的とするものではなく、日常生活に役立つ一般的な健康情報の提供を目的としています。まだまだ勉強中ですので誤りがあればぜひ教えてください🙏


コメント

タイトルとURLをコピーしました